30,000の記憶から選ばれたフードフレンドリーなワインがあなたのワイン体験を飛躍させる

30,000の記憶から選ばれたフードフレンドリーなワインがあなたのワイン体験を飛躍させる

Oct 21、2023

現役のレストランソムリエがセレクトしたオンラインワインショップ「leap」が、跳ぶ、躍動する、飛躍するといった意味をブランド名にするのは、日常の食卓におけるワインの楽しみ方を進めたい、「Wine makes a leap.(ワインは飛躍する。)」をブランドメッセージに置いているからだ。

leapが描くワインのある日常を、リードセレクターの成澤亨太が語った。 

 

 

20年間で積み重ねてきた3万本のワインの記憶

「現役のレストランソムリエが選ぶからこそ、本当においしいワインだけをお勧めできるんです」というのは、東京・日比谷のRestaurant TOYO Tokyoの統括ソムリエで、leapのリードセレクターの成澤亨太だ。成澤は、レストランソムリエなら量販店とは異なる視点でワインを勧めることができると断言する。

「量販店のソムリエの方々は、いわゆる小売のプロです。大量に買い揃えたワインをどう売るかを日々考える、ワインを売ることに特化したプロフェッショナルです。それに対して、レストランソムリエは、料理に合うワインやワインにあう料理を提案するプロ。流通では量販店さんに敵いませんが、フードフレンドリーなワインの提案には自信があります」

レストランソムリエは、月に3回から4回ほどの試飲会に足を運び、1回で30本程度試飲し、そのなかから自店のワインに合いそうなものを選んでいる。そのほか、仕入れの酒屋からのレコメンドや、すでに取り扱っているキュベの新ヴィンテージなどを含めると試飲数は、年間1500本にもなる。

たとえばソムリエとしてキャリア20年になる成澤であれば、これまでに3万本のワインを試飲してきたことになる。

その膨大な記憶の蓄積のなかから、目の前の料理に合う最適な1本のワインを選ぶのだから、成澤が「フードフレンドリーなワインの提案には自信がある」と言い切ることも納得できる。なにせ「1/30,000のワイン」なのだから。

だからこそ「ワインとの残念な出会いを減らしたい」と成澤はいう。

ワインはハレの日の酒から、少しずつ日常の酒になりつつある。じっさいワイン消費数量は、国税庁の発表によると2010年から2020年の10年間で約1.3倍。しかしながら、OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)の発表の一人当たりの年間消費量(2021年)を見ると、日本は3.0ℓでトップのポルトガルの51.9ℓに比べて18分の1と少ない。

とうぜんヨーロッパ発祥のワイン文化なのだから、日本になかなか根付かないと説明することもできるが、成澤は「ワインラヴァーがもっと増えていいはず」と考えている。

「1,000円から3,000円台のワインが家庭では主流だと思います。この価格帯のワインの味わいは玉石混合。現代の嗜好にあったワインからやや造りのスタイルが古いワイン、そもそものクオリティが低いものまであります。そのなかで、たとえばワインとの最初の出会いが自分の好みに合わなかったりすと、『ワインってそんなにおいしくないもの』という拒否反応がでる。残念な出会いになってしまうのです」

しかしフードフレンドリーな観点でのワインを知り尽くしたソムリエたちがセレクトしたワインなら、ワインの最高の出会いだけを提供することができる。さらにワインの奥深い世界に続く扉を開く役目も担うことができたら、それはワインの新しい価値創造になるのではと成澤はいう。

ソムリエがセレクトしたとしてもleapが3,000円台からのワインを用意しているのは普段使いしやすいワインから始めたいと考えるからだ。

 

世界のワイントレンドにアンテナを張るレストランソムリエ

また、世界のワイントレンドを反映しセレクトできるのが、レストランソムリエの特徴だと成澤はいう。

世界でもっとも多くの国で造られているジャンルの酒だからこそ、国の文化が現れ、そこからその国の歴史もわかる。さらにワインだけでなく世界の食を通じて、各国の文化を紹介していこうとする姿勢は、レストランソムリエならではといえるだろう。

たとえばここ数十年注目されているワイン産地にドイツがある。

ドイツといえば甘口ワインのイメージが強いが、現在は7割程度が辛口。甘いワインは、和食のように軽やかでうま味を活かすような世界的な食のトレンドにあわないことで、辛口ワインが多くつくられるようになったのだ。

フランス南西部のワイン銘醸地・ボルドーの五大シャトーがもてはやされたような長い熟成向けのワインの造り手が、造ってすぐに飲める早飲みのワインを造るようになっているのも近年のトレンドを反映した動向といえる。寝かせなければ飲めないのは不便だと感じる世代が多いことに対する新しいアプローチといえる。もともとの土壌の良さに加えて長年のワイン造りの知恵も積み重なった新時代のボルドーワインは、「重くて苦手」というイメージを払しょくするような新鮮な体験ができる。

有機栽培のブドウを使うなどしたナチュラルワイン(ヴァンナチュール、自然派ワインとも)のブームも、行き過ぎた産業化へのアンチテーゼとして人々が求めるようになっていると考えると、人類や社会が向かう方向性にワインのトレンドが影響を受けるともいえる。

レストランという開かれた場所は、さまざまな情報が行き交う場所だからこそ、レストランソムリエは社会の変化を敏感に感じとることができる。そうしたトレンドにつねにアンテナを張り、料理とともに提案できるのがレストランソムリエの最大の強みといえるだろう。

 

選んだワインを見るとその人がわかる

「価値創造はソムリエの使命だと思っています」と成澤はいう。というのもレストランは、新鮮な食体感をしたいという人が訪れる「目的来店」の場所であり、体験の価値を伝えやすい。しかし、それだけでは食の体験価値を広く伝えることはできていないと成澤は感じている。「極端なことをいえば、道行く人にも食の体験価値を伝えられないといけないのではないか」ともいう。

「今までレストランソムリエは、レストランに来ない人に向けてワインの価値を訴求してきませんでした。しかし、ECプラットフォームが身近になったいま、外に向けて体験価値を伝えなければいけません」

その方法のひとつとしてワインショップが出張先になると成澤はいう。さらに現役のレストランソムリエのなかでも20代や30代前半の若手にこそチャンスとしても大いに活用すべきだともいう。

「店に閉じこもったままのレストランソムリエは、古いと思うんです。インターネットの登場で、レストランは誰もがアクセスできる社会的に開かれた場所になりました。だからこそワインの魅力は店の外でも発信できる、そういうのやろうよと、若手レストランソムリエたちに呼びかけたいですね」

これまでソムリエがワインショップでセレクトワインを販売するには、ソムリエコンクールの優勝者や有名ワインスクールの人気講師といった限られた人しか務めることができなかった。それはワインを大量に売るためのマーケティング手法といえる。

しかし時代は、前述したようにワインの売り方が変わってきた。ワインをたしなむ人も増え文化的な土壌がようやく生まれてきたなかで、大量販売の方向とは違った造り手の個性を選んででも買いたいという少量販売のニーズも高まってきている。

加えてワイン本来の良さに目が向けられてきたなかで、選ぶ側に飲み手の感性との親和性を大事にする傾向が生まれてきている。自分が好きな人、フィーリングが合う人がすすめたワインを飲みたいというニーズだ。

成澤は、そういった時代背景をうけてleapのワインセレクトは、より個人の感性を重視したいと考えており、なかでも若手のソムリエの感性は、量販店でセレクトされているワインにはない、活き活きと感性に訴えかけるセレクトが魅力的だという。

「統括ソムリエをしているRestaurant TOYO Tokyoでは、毎月グラスワインの試飲会をスタッフ間でしています。その時にペアリングのアイディアなどを話しあうんですが、20代は自分では考え付かないような提案をしてくるんです。すごい角度だなと思う。怖い者知らずなスリリングさが、かえって新鮮でおもしろく感じるんです」

とくにワインのセレクトには、選者の性格がでる。現在leapでは、東京・自由が丘のレストラン「Solfege」のソムリエ佐藤雅之と「Restaurant TOYO Tokyo」のソムリエ徳重雄大のセレクトが並んでいる。

ベテランの佐藤なら、レストランソムリエとして歩んできたスペインやイタリア、フランスのオーセンティックなワインを選ぶ。一方で、徳重は、アメリカからフランス、スペインと産地を縦横無尽に駆けまわる。自筆の各ワインのレコメンドのコメントも、まるでInstagramの投稿のようにカジュアルで親しみのある内容で、20代のレストランソムリエらしさに触れることができる。

「料理をみればその料理人がわかるように、選んでいるワインを見ればその人がわかる。ワインリストが、選んだソムリエの人生を表しているんです」と成澤は、leapでセレクトすることが履歴書代わりになり、将来的なリクルーティングの材料にもなる可能性もある。

leapは、飲み手にワイン体験の価値創造を目指すとともに、レストランソムリエの飛躍の場所にもなるのだ。

レストランソムリエがセレクトするワインショップ「leap」から、現在のトレンドにあったワインを成澤が3本セレクトした。ワインの新しい価値を体験してほしい。

 

 

成澤がセレクトした今推したいワイン3本

 

Brother Nature Field Blend 2022 / Hahndorf Hill(DU102)

ブラザーネイチャー フィールドブレンド 2022/ハーンドルフヒル

辛口さっぱりの潮流から、甘やかでやさしいの味わいのワインは飲み疲れすることありません。癒される味とはこのこと。今のワインのトレンドをおさえた、みんなに好まれる味わいです。

生産国は、オーストラリア。使用されているブドウ品種は、ゲヴュルツトラミネール、ヴェルシュリースリング、グリューナーヴェルトリーナー、リースリング、ソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、ピノブラン、サヴァニン、マスカットブラン、ハースレヴェリュー、シュナンブラン、ミュスカデルと覚えきれません。

むしろ覚える必要はなくて、品種や国がああだこうだというのは無視して混ざり合ったおいしさを体験してもらいたい1本です。

というのもワイン造りの教科書では、その土地にあった品種を選んで植えて造るとされていますが、このワインはフィールドブレンドといって1つの畑のなかにたくさんのブドウを植えて、それをまとめてワインにするというものです。

気候や収穫時期によって、完熟のブドウや未完熟のブドウ、土壌にあったブドウと難しいブドウがあるなかで、エイや!とワインにする手法は、たとえばシャルドネ100%といった単一畑よりも、土地の個性を表現することができるのではないかと、近年注目されているスタイルです。

みなさんもブランド野菜だからおいしいのではなく、どういうところで育てているのかが大事に感じたりしませんか? 流通の規格に頑張ってあわせて真っすぐなニンジンよりも、捻じ曲げてでも元気にそだったニンジンがおいしいのは、その土地や気候風土にまかせきっているからだと思います。

フィールドブレンドは、混植混醸といわれて、その年ごとに良いブドウも悪いものもあるなかで、味わいがかえって安定していく。

好きなアーティストの単独ライブではなく、さまざまなアーティストが集ってその空間を楽しむフェスのような楽しみ方をワインでしていると思うと感じやすいかもしれませんね。

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PIL PIL 2022 / Astobiza(ID109)

アラバコ・チャコリ・ピル・ピル 2022/アストビザ

スペインのバスク地方で造られている低アルコールの微発泡ワイン「チャコリ」は、ニッチなワインといえるでしょう。

低アルコール特有の酸味をとばすために、ワイングラスの頭上高くから空気に触れさせるように注ぐスタイルは、どこかで見たことがあるかもしれません。

ワインはその土地のワインに合わせるという定石から、スペイン・バスク地方の料理にしかあわないと思われがちですが、低アルコールとほどよい酸味がじつは和食と相性がいいのはあまり知られていません。Restaurant TOYO Tokyoでも刺身にあわせたりしています。

世界的な和食ブームとヘルシー志向から、油脂分の少ない軽めの料理に、軽めの白や、日本の甲州を合わせる提案が多いですが、自分はこういうチャコリが新しい選択肢になると思っています。

微発泡で低アルコール(10%前後)なので、ビールやレモンサワーのようなイメージで普段の食卓でも楽しみやすいと思っています。

こういった提案がレストランソムリエならではだと、自画自賛しています(笑)。

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Cicaleccio 2021 / Cantina Giara(VN116)

チカレッチョ2021/カンティーナ・ジアラ

印象的なエチケットは、音の周波数がデザインされています。キュベ名の「Cicaleccio チカレッチョ」はイタリア語でガヤガヤとうるさい声という意味です。エチケットにある情報は、周波数とチカレッチョの文字だけです。

味わいや香り要素がさざ波のように混じりながら、ひとりひとりの声はききとれるけど、まざると喧噪になる——。初めてこのワインをテイスティングしたときに、そんなイメージがきちんとワインに表現されているように感じました。

みなさんも体験したことがあると思います。たとえばざわざわした居酒屋で、耳をすますと一人ひとりの会話はわかるけど、全体として混然一体としたざわめきがその空間に響いている。そんな感覚がワインにあったのです。

エチケットから受けるインスピレーションが、ワインの味わいを左右する。その感じ方は人それぞれで、味わいの感じ方も微妙に異なってくる。アート的な感覚があるワインといえます。

友人やパートナーと美術館に行ったり、映画を観に行った後に、カフェで感想を話すのがとても楽しかったりする人は、ぜひこのワインを何の予備知識もなく飲んで、その感想を話してみると、より楽しめると思います。造り手は何を考えて、ワインを通じて何を伝えようとしているのか。そんなことを思い浮かべたくなります。

そこには造り手からの「情報ではなく感性でワインを飲んでほしい」という明確なメッセージがあると思います。醸造家は芸術家といわれます。絵に対して解説を入れたくない画家がいるように、ワインにも情報を入れたくない醸造家もいる。とくに近年は、そういった醸造家が増えてきた印象があります。

もちろん解説あった方がわかりやすいという醸造家や飲み手もいると思いますので、どちらがいいというものでもありません。

大切なのは、ワインは人が造っているものであり、人が造るからこそ隅々に、造り手の意思が込められている。エチケットもその意思のひとつで、情報が詰まっているということです。

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成澤亨太|Kota Narusawa

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取材・文・撮影=江六前一郎

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